ろうそくの炎はなぜ3つの層に分かれる? — いちばん明るい場所と、いちばん熱い場所はちがう
ろうそくの炎をじっと見ると、色がひとつではないことに気づきます。外側はうすくて見えにくく、まん中はオレンジ色にかがやき、芯の近くは少し暗い。この3つの層にはそれぞれ名前と役割があって、層になる理由をたどっていくと、「そもそも何が燃えているのか」という意外な問いに行き着きます。
燃えているのは、固体のろうではない
ろうそくに火をつけると、まず炎の熱でろうがとけます。とけて液体になったろうは芯にしみこんで上っていき、芯の先で熱せられて気体に変わります。燃えているのは、この「ろうの気体」です。消防庁の消防研究センターも、燃えるものの例を「ろうそくのロウの蒸気」という言い方で挙げています。
固体からとけて液体になり、芯を上って気体になって、気体になってはじめて燃える。理科で習う状態変化が、ろうそく1本の中でぜんぶ起きています。

火を吹き消した直後に立ちのぼる白い煙は、燃えそこねたろうの気体が冷えたものです。この煙に横から火を近づけると、炎が煙をつたってろうそくに飛び移ります。あとで紹介するファラデーの講義でも披露された、有名な実験です。
炎は3つの層でできている
いちばん内側、芯のまわりの少し暗い部分が炎心です。ろうの気体がたまっているだけで、まだほとんど燃えていません。だから暗く、温度も3つの中でいちばん低くなります。
そのまわりの明るくかがやく部分が内炎です。ここでは酸素が足りず、ろうの気体は燃えきれません。燃え残った炭素のつぶ、つまり、すすが高温に熱されて光っています。炎がオレンジ色にかがやくのは、このすすのおかげです。
いちばん外側の、うすい膜のような部分が外炎です。まわりの空気にじかにふれて酸素をたっぷり受け取れるので、ろうの気体が燃えきり、温度は3つの中でいちばん高くなります。

いちばん明るい場所と、いちばん熱い場所はちがう
いちばん明るいのは内炎、いちばん熱いのは外炎。 「明るい=熱い」と思いこんでいると逆に答えてしまう、試験の定番ポイントです。
明るさの正体は、すすが熱されて出す光。熱さの正体は、燃えきる激しさ。光っているのは燃え残りで、熱いのは燃えきっている場所——出どころが別なので、場所もずれるのです。
こげあとで温度をたしかめる実験も定番です。竹串を炎に水平にさっと通すと、外炎が当たった両側だけが黒くこげ、炎心のあたりはこげずに残ります。こげあとが、そのまま温度の地図になります。

燃えるとは、酸素と結びつくこと
ろうは、炭素と水素でできています。燃えるとは酸素とはげしく結びつくことなので、炭素は二酸化炭素に、水素は水蒸気に変わります。ろうそくにコップをかぶせると内側が白くくもるのは、この水蒸気のしわざです。そしてしばらくすると、コップの中の酸素を使いきって、炎は消えます。
消防研究センターは、ものが燃えるのに必要な3つ、可燃物・酸素・熱を「火の三角形」と呼んでいます。どれか1つを断てば火は消える。コップをかぶせるのは酸素を断つ消し方で、息でふっと消すのは、ろうの気体という可燃物を吹き飛ばす消し方です。
宇宙では、炎がまるくなる
ところで、炎はなぜどれも上へ細長くのびた形をしているのでしょう。あたためられた空気は軽くなって上へのぼります(海風と陸風の記事で風を起こしていたのと同じ理屈です)。炎のまわりでは熱い空気がのぼり続けていて、その流れが炎を上へ引きのばしています。
JAXAの解説によると、無重力では、あたためられた気体とふつうの気体のあいだに重さの差がないため、のぼる流れが生まれません。すると炎は上下を失って、まるくなります。ふだん見ている炎の細長い形は、重力があってこその形なのです。

覚えるなら「明るい内炎、熱い外炎」
覚えることばはひと組だけです。明るいのは内炎、熱いのは外炎。明るさはすす、熱さは燃えきる激しさと、理由ごとおさえておけば、逆に答えることはなくなります。そのうえで、燃えているのは芯の先で気体になったろうで、燃えたあとには二酸化炭素と水蒸気が残る。ここまで言えれば、この単元の背骨は通っています。
19世紀のロンドンでは、科学者ファラデーが英国王立研究所の大講堂で、700名ほどの少年少女に向けて、ろうそくだけを題材にした実験授業を6回行いました。その記録『ロウソクの科学』は、いまも読みつがれています。1本のろうそくをじっと見ることは、160年前から変わらない、科学の入り口です。