種はなぜ芽を出す? — 答えより大切な「1つだけ変える」という作法
種が芽を出すのに必要なものは、水・空気・適当な温度の3つ。日光も肥料もいりません。この答えは覚えれば済みます。でも、この単元がほんとうに教えているのは答えのほうではありません。「その3つだと、どうやって確かめたのか」という調べ方のほうです。
必要なのは、水・空気・適当な温度
文部科学省の手引きにも、「植物の発芽には、水、空気及び温度が関係していること」と書かれています。教科書でならう3条件は、ここから来ています。

空気が必要なのは、種が呼吸をしているからです。水にすっかりしずめた種が芽を出さないのは、水が足りないからではなく、空気に触れられないからです。温度は、寒すぎても暑すぎてもだめで、多くの植物ではおよそ20〜30℃が適しています。冷蔵庫に入れた種が芽を出さないのは、水も空気もあるのに温度だけが足りないからです。
「1つだけ変える」が実験の作法
では、水が必要かどうかを、どう確かめるか。
水をやった種と、やらない種を用意して見くらべます。このとき大事なのは、水以外はまったく同じにそろえることです。片方だけ日なたに置いたり、種の数を変えたりしてはいけません。そんなことをすると、芽が出た理由が水なのか日光なのか分からなくなるからです。

文部科学省の手引きも、「調べる(変える)条件と同じにする条件を明確にして記録に残すことが大切である」と書いています。調べたい条件だけを変えて、ほかは全部そろえる。 この比べ方を対照実験といいます。
入試でよく出るのは「AとBのどちらとどちらを比べればよいか」という形の問題です。表を見て、変えたい条件だけが違っていて、ほかが全部同じ組み合わせを探す。これだけで解けます。
光がいらないことも、実験で分かる
暗い箱の中と明るい場所に、水・空気・温度を同じにそろえた種を置いてみます。すると、どちらも芽を出します。だから、発芽に光は必要ではないと言えます。

肥料もいりません。芽が出るまでの養分は、種の中にたくわえられているからです。インゲンマメなら子葉に、イネならはいにゅうに入っています。ヨウ素液をつけると青むらさき色になることから、その正体がでんぷんだと分かります。種は、お弁当を持って土の中で待っているようなものです。
ただし例外もあって、レタスのように光が当たらないと芽を出しにくい種もあります。日本大学の資料では、こうした光に敏感な種を好光性種子と呼んでいます。レタスの種をまくときに土を厚くかけないのは、このためです。
芽が出たあとは、日光と肥料がいる
発芽と成長は、必要なものがちがいます。文部科学省の手引きでは、発芽の条件(水・空気・温度)とは別に、「植物の成長には、日光や肥料などが関係していること」と分けて書かれています。

日かげで育てた植物は、葉がうすい黄色っぽくなり、茎は細くひょろひょろとのびます。種の中のお弁当を食べ終わったあとは、自分で光合成をして養分を作らなければならないからです。肥料の三要素も、ちっ素は葉や茎、リン酸は花や実、カリは根と、はたらく場所が分かれています。
種の中のお弁当だけで足りるのが発芽まで。自分で養分を作りはじめてからが成長。そう区切ると、条件が2組あることも自然に飲みこめます。
覚えるのは3つ、身につけるのは1つ
覚えることは「水・空気・適当な温度」の3つだけ。日光と肥料は成長のほうへ、と仕分けておけば取りちがえません。
そのうえで持ち帰ってほしいのは、調べたい条件だけを変えて、ほかはそろえるという作法です。これは発芽だけの話ではありません。どちらの条件がきいているのか知りたいとき、いつでも使えます。テストの点にも、日々の「なぜ?」にも効く道具を、この単元は配っています。