かげはなぜ動く? — 太陽の反対側で、かげは「時計のはり」になる
かげふみで遊んだことはありますか。逃げる人のかげは、ふんでもふんでも本人といっしょに逃げていきます。ところが、だれも動かなくても、かげは1日かけてゆっくり動いています。朝に校庭の鉄棒のかげを、木の棒で地面になぞっておくと、昼にはもう別の場所へ移っている。なぜでしょうか。
かげは、太陽の反対側にできる
かげができるのは、ものが光をさえぎるからです。光はまっすぐ進むので、さえぎられた後ろ側だけが暗くなる。だからかげは、いつでも光と反対の向きにできます。体の前から光が当たれば、かげは後ろに。地面に立てた棒のかげは、太陽とちょうど反対側にのびます。

この「反対側」というルールさえおさえれば、かげの動きはぜんぶ太陽の動きから読み解けます。かげだけを見ていると不思議でも、太陽とセットで見れば、かげは太陽と手をつないで反対側を回っているだけなのです。
太陽は東→南→西、かげは西→北→東
日本で見る太陽は、東からのぼり、南の空を通って、西にしずみます。かげはその反対側ですから、
- 朝、太陽が東にあるとき → かげは西へのびる
- 正午ごろ、太陽が真南にきたとき(南中) → かげは北へのびる
- 夕方、太陽が西にあるとき → かげは東へのびる
つまり棒のかげの先は、1日かけて西→北→東の順に動いていきます。太陽の通り道とかげの通り道は、いつも棒をはさんで向かい合わせです。
正午のかげが、いちばん短い
かげは向きだけでなく、長さも変わります。決め手は太陽の高さ、つまり太陽の光が地面とつくる角度(太陽高度)です。頭の真上に近い高いところから光が当たるほどかげは短く、地面すれすれの低いところから当たるほど長くなります。
太陽がいちばん高くなるのは南中する正午ごろ。だからかげは正午ごろにいちばん短く、朝と夕方に長くなります。夕方、じぶんのかげが電柱みたいにのびるのは、太陽が低いからです。

向きが時刻で決まり、長さも時刻で決まる——ということは、かげを見れば時刻がわかる。これを道具にしたのが日時計です。地面に棒を1本立てるだけで、かげが時計のはりになります。
下の図は動かせます。空を左右になぞって太陽を動かすと、棒のかげが向きと長さを変え、かげの先の通った跡が線になって残ります。「夏至」「冬至」のボタンの意味は、このあとの節で。
動いているのは、太陽ではなく地球
ここまで「太陽が動く」と書いてきましたが、ほんとうに動いているのは地球のほうです。地球は1日に1回、西から東へ自転しています。回っているメリーゴーラウンドから外の景色が反対に流れて見えるように、西から東へ回る地球の上からは、太陽が東から西へ動いて見える。この見かけの動きを日周運動といいます。

かげを動かしている犯人をたどっていくと、太陽ではなく、足もとの地球の回転にたどりつく。かげの観察は、地面にいながら地球が回っていることをたしかめられる、いちばん身近な方法なのです。
季節でかわる、かげの通り道
太陽の通り道は、季節によって高さが変わります。南中したときの高さ(南中高度)は、夏至の日に1年でいちばん高く、冬至の日にいちばん低くなります。だから南中したときのかげは、夏至がいちばん短く、冬至がいちばん長い。冬の昼のかげが夏より長いのは、気のせいではありません。
日の出の場所も動きます。春分・秋分の日は真東からのぼって真西にしずみ、夏至のころは真東より北寄り、冬至のころは南寄りからのぼります。
そして、かげの先が1日に通った跡をつないだ線(日かげ曲線)にも、季節の個性が出ます。春分・秋分の日だけは、この線が東西にのびるまっすぐな一直線になります。夏至や冬至の線は曲がるのに、年に2回だけ、ぴたりとまっすぐになる。うそみたいな話ですが、上の図で「春分・秋分」を選んで1日動かすと、たしかにまっすぐな線が残ります。夏至・冬至と見くらべてみてください。
かげは、時計でもあり、こよみでもある
まとめると、かげの見かたはこうなります。
- 向き … 太陽の反対側。西→北→東と動く
- 長さ … 太陽が高いほど短い。正午ごろが最短
- 季節 … 南中高度は夏至に最高・冬至に最低。日かげ曲線は春分・秋分だけ一直線
向きと長さで時刻がわかり、通り道の形で季節までわかる。棒1本のかげは、時計でもあり、こよみでもあるわけです。晴れた日に棒を立てて、1時間おきにかげの先に印をつけてみると、上の図と同じ線が地面にあらわれます。自分の目でたしかめたことは、テストの日にもいちばん強い味方になります。