箱の中の景色は、なぜさかさま? — 小さな穴ひとつでうつる仕組み
箱に小さな穴をひとつ開けて、反対がわに白い紙を張る。暗くした部屋でろうそくに向けると、紙に炎がうつります。レンズも電池も使っていないのに、です。
しかも、うつった像はさかさま。上下が逆さになっています。なぜ穴ひとつでうつるのか、なぜさかさまになるのか——使う法則は、たったひとつだけです。
光はまっすぐ進む、それだけ
ろうそくの炎からは、あらゆる向きへ光が飛び出しています。そのうち、ちょうど穴をねらった光だけが箱の中へ入れます。ほかの光は箱の壁にぶつかって終わりです。
炎(上のほう)から出た光は、穴を通ったあともまっすぐ進みます。斜め下へ向かっていた光は、穴の先でも斜め下へ。だから紙の下のほうに届きます。

反対に、ろうそくの根もと(下のほう)から出た光は斜め上へ進んでいるので、紙の上のほうへ。穴という1点で、光どうしがすれちがうのです。
上から来た光は下へ、下から来た光は上へ。
同じことは、箱を真上から見おろしたときにも起きています。右はしから出た光は穴を通って左へ、左はしからの光は右へ。だからできる像は、上下も左右も入れかわった、さかさまの姿になります。
箱が長いほど、像は大きい
穴から紙までを長くすると、像はどうなるでしょう。光のすじは穴から斜めに広がっていくので、奥へ行くほど像は大きくなります。
穴をはさんだ左右に、同じ形の三角形が2つできています。形が同じなら辺の比も同じなので、大きさはきっちり計算できます。
像の高さ = ものの高さ × 箱の長さ ÷ ものまでの距離
高さ24cmのろうそくが60cm先にあるとき、箱の長さが12cmなら 24×12÷60=4.8cm。箱を2倍の24cmにすると9.6cmと、像も2倍です。
下の動く図で確かめてみてください。スライダーで箱を伸ばすと像が大きくなり、穴の大きさを変えると見え方が変わります。
穴が小さいほど、くっきり
「大きい穴のほうがたくさん光が入って、よく見えるのでは?」と思うかもしれません。ところが逆です。
穴が大きいと、ろうそくの1点から出た光が穴の広さのぶんだけ束になって通り抜け、紙の上で丸く広がってしまいます。点が点のまま届かず、にじんだ丸になる——これがぼやけの正体です。

穴を小さくすれば、通り抜ける束が細くなって像はくっきり。ただし入ってくる光の量も減るので、像は暗くなります。くっきりさせるほど、像は暗くなるのです(小さくしすぎると今度は別の理由でぼやけはじめるので、針の穴くらいがちょうどいい大きさです)。
作ってみよう
空き箱でつくれます。
- お菓子の箱などの片方の面に1cmほどの穴を切り抜き、その上からアルミホイルを張って、ホイルのまん中を針でひとつ刺す(厚紙に直接刺すと、穴がトンネルになってうまくうつりません)。
- 反対の面を切り抜いて、白いうすい紙(トレーシングペーパーやクッキングシート)を張る。
- 箱のすき間をテープでふさぎ、穴を明るいもの(窓の外の景色・電球)に向ける。紙のほうから見ると——さかさまの景色。ろうそくでためすときは部屋を暗くするので、かならずおうちの人といっしょに。
うまく見えないときは、紙のまわりを手や布でおおって、よけいな光が入らないようにするのがコツです。
じつは目も同じ
わたしたちの目にも、「光の入り口」と「うつる面」があります。黒目の真ん中にある瞳孔が入り口で、奥の網膜がうつる面。ちがうのは、目の中には光を集めるレンズ(水晶体)があることです。おかげで穴を小さくしなくても、くっきり見えます。それでも網膜にうつる像はさかさま——光が目の中の1点ですれちがうのは同じだからです。それを脳が正しい向きに読みかえているので、世界はさかさまに見えません。
暗いところで瞳孔が大きくなるのも、さっきの話とにています。光をたくさん入れるために入り口を広げているのです。
覚え方 — 「穴ですれちがう」
- 光はまっすぐ進む。穴を通っても曲がらない。
- 穴の1点で光どうしがすれちがうから、上下も左右も入れかわる。
- 箱が長いほど像は大きく、穴が小さいほどくっきり(そのかわり暗い)。
レンズも電気もいらない、穴ひとつのカメラ。難しい仕組みに見えて、使っているのは「光はまっすぐ進む」という、たった一行の約束だけなのです。