てこはなぜ楽になる? — 道具は「まん中に何があるか」で3種類に分かれる
重い石を素手では動かせないのに、棒を1本さしこむと持ち上がります。力が増えたわけではありません。同じ力の使い方を変えただけです。てこの問題は、この「使い方」を3つの点で整理するところから始まります。
まず3つの点を置く
てこには名前のついた点が3つあります。
- 支点 … 回転の中心。それ自体は動かない
- 力点 … 手で力を加えるところ
- 作用点 … 動かしたいものに力がはたらくところ

楽になる条件も、この3点の距離で決まります。支点から力点までを長く、支点から作用点までを短くすると、小さな力で足ります。くぎぬきで柄の端を持つと軽く抜けるのは、支点から手までを長くしているからです。
道具が3種類に分かれる
ここからが本題です。身のまわりのてこは、3点のうちどれがまん中にあるかで3つに分かれます。まん中が変われば、力が強くなるか弱くなるかも変わります。

支点がまん中 — はさみ・ペンチ・くぎぬき

力点と作用点が支点をはさんで反対側にあるので、力の向きが逆になります。手を下げれば刃は上がる。支点から力点までを長くとれば、作用点の力は大きくなります。
作用点がまん中 — せんぬき・くるみ割り・押し切りカッター

支点と力点が同じ側にあるので、力の向きは同じ。そして作用点は必ず支点に近くなるので、力はいつも大きくなります。かたい栓や殻を相手にする道具がここに集まるのは偶然ではありません。
力点がまん中 — ピンセット・トング・毛ぬき

ここだけ様子が違います。作用点のほうが支点から遠いので、力は小さくなります。損をしているように見えますが、そのかわり作用点の動きが大きく、細かく調節できる。小さなものをつまむ道具がこの形なのはそのためです。
想像してみよう

使っているところを思いうかべると、違いがはっきりします。はさみは刃のまん中のネジを中心に回り、せんぬきは王冠のふちに引っかけたところが仕事をし、ピンセットは指でつまんだところより先が大きく動きます。
力を得るか、動きを得るか
3種類を並べると、てこが何をしている装置なのかが見えてきます。
てこは力を生み出しません。力と動きを交換しているだけです。小さな力で済ませたければ、そのぶん長い距離を動かす必要がある。逆に、わずかな手の動きを大きな動きに変えたければ、力は犠牲になる。
ピンセットが「力が小さくなる」のは失敗ではなく、動きの細かさと引き換えにした結果です。そう捉えると、3種類目だけ例外に見えていたものが、同じ原理のうちに収まります。
初めて見る道具でも言い当てる
覚えるのは名前の一覧ではありません。手順が1つあれば足ります。
- 支点をさがす(回転の中心。ネジや軸になっていることが多い)
- 手を当てる場所が力点、相手に触れる場所が作用点
- どれがまん中かを見て、3種類のどれか決める

つめ切りのように、てこが2つ組み合わさった道具もあります。それでも1段ずつこの手順を当てれば分解できます。道具の名前を丸暗記するのではなく、目の前の道具に手順を当てるほうが、試験でも初見の道具に強くなります。