社会

日本にほん三大さんだい美林びりんはなぜ「いい木き」? — 答こたえは200年ねん、300年ねんという時間じかん

「日本にほん三大さんだい美林びりん」とよばれる森もりが3つあります。青森あおもりヒバ、秋田あきたスギ、木曽きそヒノキ。木きの種類しゅるいはぜんぶちがい、場所ばしょも青森あおもり県けん・秋田あきた県けん・長野ながの県けんとはなれています。

それなのに、どれも何百なんびゃく年ねんも「いい木き」として選えらばれてきました。ばらばらの3つに、共通きょうつうすることが一ひとつだけあります。

どれも、とてもゆっくり育そだった木きだということです。

3つに共通きょうつうするのは「時間じかん」

林野庁りんやちょう(森もりを管理かんりしている国くにの役所やくしょ)の説明せつめいを並ならべると、出でてくる数字すうじの大おおきさにおどろきます。

人ひとの一生いっしょうより長ながい時間じかんが、ふつうに出でてきます。

ゆっくり育そだつと、年輪ねんりんがつまる

木きの切きり口くちに見みえる年輪ねんりんは、1年ねんに1本ぽんずつ増ふえていきます。だから、同おなじ太ふとさの木きが2本ほんあったとき——

同じ太さの丸太を2本くらべ、ゆっくり育った木のほうが年輪の本数が多いことを示す図

この「つまっている」ことが、そのまま木材もくざいの良よさになります。林野庁りんやちょうは青森あおもりヒバを、こう説明せつめいしています。

北国きたぐにの厳きびしい風雪ふうせつに耐たえながら、長ながい年月ねんげつをかけてじっくりと成長せいちょうしたヒバは、緻密ちみつで狂くるいが少すくなく、木目もくめも細こまやかで美うつくしい

「狂くるい」は、木きがそったりねじれたりすることです。狂くるわない木きは、柱はしらや板いたにしたあと形かたちが変かわりません。だから長ながくもたせたい建物たてものや道具どうぐに使つかわれます。

青森県・秋田県・長野県の位置と、青森ヒバ・秋田スギ・木曽ヒノキの産地を示す地図

「三大さんだい美林びりん」は誰だれが決きめたのか

気きになるのは、誰だれが3つを選えらんだのかです。

明治めいじ10年代ねんだい、国くにがはじめて全国ぜんこくの森もりを調しらべました。その報告ほうこくに、「木曽きその扁柏へんぱく(ヒノキ)、青森あおもりの羅漢柏らかんはく(ヒバ)、秋田あきたの杉すぎ」が「我わが国くに最良さいりょうの森林しんりんなりとす」と書かかれています。

人気にんき投票とうひょうでもキャッチコピーでもなく、国くにが全国ぜんこくを歩あるいて調しらべたうえで書かきのこした評価ひょうかでした。

木曽きその森もりは、一度いちどなくなりかけた

ここからが、いちばんおもしろいところです。

木曽きそのヒノキは平安へいあん・鎌倉かまくら時代じだいから切きり出だされていました。ところが江戸えど時代じだいの前半ぜんはんに切きりすぎて、山やまは「めぼしい樹木じゅもくが少すくなくなり大変たいへん荒あれてしまった」と記録きろくされています。

そこで木曽きそを治おさめていた尾張おわり藩はんは、「木き一本いっぽん、首くび一ひとつ」とよばれる厳きびしい保護ほごの決きまりを作つくりました。勝手かってに木きを切きれば命いのちにかかわる、という言いい方かたです。ヒノキ・サワラ・アスナロ・ネズコ・コウヤマキの5種類しゅるいは切きることを禁止きんしされ、「木曽きそ五木ごぼく」とよばれました。

そして時間じかんがたちました。いま赤沢あかさわで見みられるヒノキが樹齢じゅれいおよそ300年ねんなのは、ちょうどその保護ほごが始はじまったころに育そだちはじめた木きだからです。

江戸時代前半に切りすぎて荒れた山が、保護のあと三百年かけて森に戻ったことを示す図

林野庁りんやちょうは、いまの木曽きそヒノキ林りんをこう説明せつめいしています——「いわゆる原生げんせい林りんとは異ことなる、人為じんいが大おおきく加くわわって成立せいりつした森林しんりん」。

つまり三大さんだい美林びりんは、人ひとが手てを出ださなかったから残のこった森もりではなく、人ひとが守まもることに決きめたから残のこった森もりなのです。

使つかい切きると、つぎは200年ねん待まつことになる

年輪ねんりんがつまった木きは便利べんりです。でも、育そだつのに200年ねん、300年ねんかかるということは、切きってしまったら、つぎが同おなじ太ふとさになるまで200年ねん、300年ねんかかるということでもあります。

じっさい、国くにが売うり出だしていた天然てんねん秋田あきたスギの供給きょうきゅうは、平成へいせい24年度ねんど(2012年度ねんど)で終おわりました。いまは人ひとが植うえて育そだてた秋田あきたスギを、計画けいかくを立たてて出だしています。木曽きそでも「木曽きそ悠久ゆうきゅうの森もり」という取とり組くみが始はじまり、人ひとが植うえた林りんを天然てんねんの林りんに戻もどしていく作業さぎょうが進すすんでいます。

「いい木き」をこれからも使つかうために、いまは切きる量りょうを減へらして森もりを育そだてる側がわに力ちからを入いれている、ということです。

覚おぼえ方かた

北きたから順じゅんに、ヒバ → スギ → ヒノキ。

青森あおもりヒバ(青森あおもり県けん)→ 秋田あきたスギ(秋田あきた県けん)→ 木曽きそヒノキ(長野ながの県けん)。地図ちずを上うえから指ゆびでなぞると、県けんと木きが同時どうじに入はいります。

そして、理由りゆうは3つ覚おぼえる必要ひつようがありません。どれも「ゆっくり育そだった」。これ一ひとつで足たります。

おもな参考情報